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アーヴァン

 投稿者:クリー  投稿日:2008年 1月 6日(日)11時22分35秒
返信・引用
  「ねぇアーヴァン、首尾はどうかな」
テュフォンはワインのグラスを傾けた。彼は立派な玉座に座り、御馳走を並べている。
「それが、ヘレン殿がなかなか表にいらっしゃらないもので」
「まぁ、嫁入り前だもんね。必要以上に顔は見せてくれないか」
それでもまだテュフォンは上機嫌だった。

「一回きいてみたかったんだけどさ、アーヴァンはどうして大神ゼウスを裏切ってまで僕に
使えてくれるのかな」
ある日テュフォンの城の門を叩き、大神の座を奪った日には自分を神にしてくれるという盟
約の元、テュフォンに使えたのはアーヴァンだった。
よりによってゼウスの最高司祭。この老父は何を考えているのだろう。

「それは、わたくしめが先読みをしたからでございます」
「先読み?」
「はい。わたくしめは幼き頃より大御神ゼウスの宮殿に使えておりました故、特別な力が備
わっておるのです」
アーヴァンは今年で七十になる大老。その皺はこの世で最も深い…つまり、一番長生きであ
るとされる。

「わたくしめは大御神ゼウス、悪魔テュフォンのそれぞれの未来を先読み致しました。する
と、お二方は近い内に衝突なさると出た。そこでわたくしめはどちらが木星の名を手にする
のか、先読みしたのでございます」
「へぇ~?」
テュフォンは耳まで裂けた口でにかりと笑った。

「その先読みで、僕が勝つと出た…だから君はここに来たんだ」
テュフォンは更に機嫌を良くしたようで、数人の悪魔を呼んで宴を開いた。
「ああ、いいねぇ。実に縁起がいいよ。悪魔の自分が縁起に拘る日が来るなんて思わなかっ
たけど。何せあの大神と張り合うからさ、僕もストレス堪ってて」
テュフォンはそのままの勢いで一気に酒を煽った。

「アーヴァンはいくつの時からゼウスの神殿にいるの?」
「5つの時からにございます。わたくしめの母は信仰深き者にございまして、長男以外の子
供は皆大御神に捧げたのでございます」
「ふぅ~ん。今時珍しいね。じゃあアーヴァンの兄弟姉妹はほとんど神殿にいるんだ」
テュフォンは大して興味を持たなかったようで、気にも止めずに宴に戻った。

「…それにしても…ユカって人間が気になるな」
 
 

シルク・ド・リーム一行

 投稿者:クリー  投稿日:2007年12月24日(月)14時05分15秒
返信・引用
  「ギリシャに集まってくれだとさ」
王明そっくりの幻影は半ばげんなりしたように言った。シルクは応えない。
ここ最近放心状態が続いているのだ。
一緒に過ごすうちに、親しくなった。敬語を解いた幻影は、どこまでも王明に似ていた。
空虚な瞳で王明を見つめるシルクを、R0Yは何と声を掛けたらいいか分からない。

R0Yが知っている事と言ったら、この初老の男性は王明と言う名だという事。
王明は夢華の祖父で、既に死んでいる事。王明には愛する妻子が居た事。
王明は、シルクの知っている人だという事。そして恐らく、

シルクは王明が好きだった事。


(困った…な…)
今の所敵という敵に遭遇していないからいいが、もしも強い敵が現れたらどうだろう。
今のシルクは、剣を振るって舞えるだろうか。

「追加情報。敵は悪魔だとさ。各自偽名を考えよ…だと」
幻影はやれやれと首を振った。どうも人間臭い幻影だ。
初め敬語で真面目腐った態度だった時は、家族という設定なのに違和感が拭えず、周囲に
ばれやしないかと冷や冷やしたものだが。
「俺はいいけどね。幻影だから死にようがないしさ」

死という単語に、シルクは僅か反応を見せた。
首を横に振って、どうやら気合いを入れ直しているようだ。
彼女は彼女なりに、心の葛藤があるのだろう。
そっと指先で、王明に触れてみる。触れない。彼は王明じゃない。作られた偽物。
「王明…お前は、本当に死んでしまったのだな」

それからシルクは、放心状態になる事はなかった。


「どうする?私はシルクのままでいいと思うが」
「いいんじゃん?いつもの長い名前、誰も使わないしね」
R0Yは内心ほっとしていた。彼女は誰よりも強くて、頼りになる。
「俺はどうしよっか」
「略しようがないからな。頭文字をとって、アールとか」

王明そっくりの幻影は夢華に通信して偽名を告げると、眠りについた二人を見て微笑んだ。
「シルク、シルク・ド・リーム。お前さんなら俺にけりを付けられると、そう思ってたさ」
王明にそっくりの幻影には、少し前から王明の魂が取り憑いていた。
その辺りから、幻影は敬語を使わなくなったのだ。
幻影はシルク達と親しくなったから敬語を使わなくなったのではなく、取り憑かれていたか
ら敬語を喋れなかったのだ。

「夢華もでかくなったよなぁ。こんな小細工使えるようになって。俺の役目もお終いさ」
王明が死んで尚、この世に残る理由はなくなった。彼は静かに、少しずつ消えていく。
「幻影さんよ。姿借りて悪かった。後は任せたぞ」
幻影は僅か首肯すると、敬意を表して王明を見送った。

次の日から、幻影はまた敬語で話し始めた。


R0Yは突然態度の変わった幻影に疑問を抱いたが、シルクが何も言わないので良しとし、
手荷物を片付けて先頭を歩く。
シルクは殿を歩く幻影に、ぽそりと耳打ちした。

「王明は…あいつは、逝けたか?」
「気付いておりましたか。彼はちゃんと逝きましたよ。…良かったのですか?思いを告げな
くても」
「幻影ごときに指摘されるとはな。私も落ちたもんだ。いいんだよ、あいつはああいう乙女
な展開は苦手だから」
シルクは首を竦めると歩を進めた。一言言い残して。


「王明…馬鹿な奴」
 

テュフォン

 投稿者:クリー  投稿日:2007年12月23日(日)13時35分57秒
返信・引用
  鞘が、僅かな金属音を鳴らして震えた。日の光を浴びて煌めく刃。飛びかかる影は化け物。
(0.11秒の差で、間に合わない)
夢華は即刻判断する。この判断が遅ければ、戦場は生き抜けない。
「『希望』のつるぎ夢華第二法、反射!」
とっさに光の壁を形成する。獣は弾き出されて野に転がった。

ゥゥゥゥ…。狼のような真っ黒い生物は直ぐさま体制を立て直した。
(私の方が0.09速い)
夢華も攻撃に出る。
「『情熱』のつるぎ夢華第三法、灼熱地獄!」
火柱が上がり、黒い狼を含む数匹を丸焦げにした。

『うむ、優秀なる主人ぞ』
『ああ。婆よりは強いな』
宝石達も、久々の戦闘に興奮していた。
「まだだ!『情熱』のつるぎ夢華第二法、炎蛇!」
炎の蛇がうねり、雄叫びを上げて舞う。

【う~ん、物騒だねぇ】
「…っ…!?」           、、、、、
突如、炎の蛇の動きが止まった。いや、止められた。      、、、、、、
【僕の家来なんだ。『箱』が作り出した化け物なんかじゃないよ?君が消す理由なんてない
だろ】
                            、、
空を舞っていた炎蛇が、霧が晴れるように霧散した。その先に立つ、一人の男。
「…お前は誰だ」 、、、、
先程から感じていた嫌な感じが強くなる。夢華の直感がこの男の危うさを語っていた。
空に、まるで地面にでも居るように立つ男。
【僕?…僕は、大神ゼウスすら敵わない…悪魔さ】

黒ずくめで、髪も、目も、肌すらも黒い。
【神を山羊に変えた事だってあるよ。そうだな、次のギリシャ神王とでも呼んでもらおうか】
「化け物らを裁ききれるか?」
夢華はパブロフに耳打ちした。
「頼まれてあげる。ただし貸しにしとくから」

パブロフは広場中に蠢き合う獣を、片付けに掛かった。

「…それで、悪魔。名前は?」
【僕はテュフォン。勿論偽名だけどね。君は何者なのかな?中国人のようだけど…ヨーロッ
パに何の用事?そっちの方向は、ギリシャだよね。ギリシャには今のギリシャ神王ゼウスの
神殿しかないはず】
テュフォンはニヤリと笑った。
【てことは、君はゼウスに用事があって、何かしらの関係者…って事だ。君、名前は?】
「…ユカ。偽名だがな」
【へぇ、賢いね。悪魔に名前を教えちゃいけない事知ってるんだ。…ユカ、僕は君が気に入
ったよ。ゼウスにくれてやるなんてもったいないね。でも残念、お別れだ。僕は急いでるか
らさ】
テュフォンはまた意地の悪い微笑みを浮かべると、西の空へ消えた。

「夢華、今のは?」
「さあ。でもこれからは私の事はユカと呼んでほしい。私は君の事をウルフと呼ぶから」

悪魔に名前を知られたら、魂を取られる。逆に、悪魔の弱点も名前。
「テュフォン、か。本当の名前は何だ?」


「う~ん、久々に楽しかったなぁ。あの子、気になる物持ってたし」
テュフォンはくすりと笑って、ギリシャに飛んだ。
 

夢華一行

 投稿者:クリー  投稿日:2007年12月16日(日)14時55分20秒
返信・引用
  「何か、嫌な感じがする」
快晴。風は優しくて、暖かい。花が野原の黄緑を埋め尽くすように咲いていて、ちょっと小
高い丘は見晴らしがいい。運がいいのか、近くにモンスターはおらず、人々は笑い合って歌
を歌う。
そんな平和な一場面に、どこの誰が「嫌な感じ」を覚えるのだろう。

「何?時差ぼけの次は気持ち悪いって?普段の不摂生が祟ってるんだよ、ソレ」
パブロフは暢気に欠伸を一つした。ああ、日溜まりが気持ちいい。
「違う!私は風邪なんかひいていない。これは直感だ。…早く、ギリシャに行かなければ…
そうしなければならない気がする」

久々に、真面目そうな夢華を見た。名前が変わる前とか、それから暫くの間は彼女もよくこ
んな難しい顔をして、真面目腐った言葉を使っていたものだが。
「…嵐が来る」
夢華は覚悟を決めたような、それでいてどこか不安気な不思議な表情をした。
勿論空には雨雲一つないし、天気予報師も嵐の予感は告げていない。

『ふぅむ、不思議なおなごじゃ。我も今、同じような事を考えておった』
『は、婆が。一人前に口きくんじゃねー。俺より先に俺が言いたい事を言うな』
またそこから喧嘩に発展していく二人だが、今日の夢華は何も言わなかった。
黙り込む主人を見て、パブロフもにわかに緊張する。

「聞こえるか」
夢華は方々に放した『幻影』達に呼びかけた。
「これから、ギリシャに集まってほしい。ただし、クリンの一行とV一行は残ってくれ」
夢華は通信を一方的に打ち切ると、鞘から剣を抜いた。

「どうした?」
パブロフの問いに、夢華は目線を送らずに応える。
「今の通信で敵の大本に私の存在がばれた。なかなかのやり手らしいな」
地平線が、みるみる黒ずんでいく。何かが近付いてくるのだ。

「あれは…大量の化け物!?」
パブロフの声に気付いた人々が叫び声を上げて逃げて行く。平和な野原が、驚きと恐怖に染
まった。
「嵐が、来るな」
夢華の呟きは騒音にかき消され、彼女は剣を握って、舞う。
 

ギリシャ

 投稿者:クリー  投稿日:2007年12月 9日(日)11時16分25秒
返信・引用
  「アーヴァン、最近のゼウスはどうだい?」
テュフォンはスパイに問うた。スパイことアーヴァンはゼウスの神殿の最高司祭。
何十年も前からゼウスに仕えるアーヴァンは、実は数年前からテュフォンの手下となっていた。
「それが、随分お疲れのようで。何せ立て続けに凶報が有りましたからな。そう言えばこの
間、『最近の唯一の楽しみはヘレンが結婚する事』とぼやいておりました」

「ヘレン?ああ、あの夫持ちの婦人を白鳥になって騙して、自分の妻にしちゃったって噂、
本当だったの?レダ…だっけ。で、その娘がヘレンだよね。たいそうな美人って聞いてるよ」
ふぅん、とテュフォンは鼻を鳴らした。

「ゼウスって本当に妻が多いよね。エウロパとかマイヤだってそうだろ?よくもまぁあの
気の強いヘラが黙ってるね。気に入らない。ゼウスってそんなにいい男かなぁ?」
「とんでもございません、テュフォン様」
アーヴァンの返答に、テュフォンは機嫌を直した。
「そうだよね。ゼウスなんか、僕の敵じゃないよ。あいつが木星だって?よく言うよ。
次の王は、僕だよ。木星の席は譲ってもらうんだから」
レダにはカストルとポルックスの双子の兄弟と、ヘレンとクリュテムストラの双子の姉妹を
子供に持っている。
別にゼウスの血縁ならば、乳母で羊のアマルティアや、他の妻のエウロパかマイヤでもよい
のだが、
「せっかくゼウスが名指ししてくれたんだもん。アーヴァン、次はヘレンだ。ヘレンを誘拐
しておいで。そして、これが最後だ。戦争を起こすよ。場所は、トロイヤだ!」
テュフォンは薄ら笑った。さぁ、どうする、大神ゼウス。次こそは、貴様が地に頭をつけて
媚びうるのかな。

「ああ、今日は最高に気分がいいよ。ゼウス、待っていてね。君を必ず、王座から引きずり
下ろしてみせるから」
 

時差ぼけ

 投稿者:クリー  投稿日:2007年11月25日(日)12時10分8秒
返信・引用
  「あ~、眠いぃぃ」
夢華は木陰に入ると、芝生に頬を埋めた。「尊厳」の王冠がこてんと地面に落ちる。
「夢華、お前なぁ。モンスターとか来るかもしれないんだから…」
パブロフが呆れたようにポテポテ歩いてくる。
実はすぐ側に「明光」のメイ君が寄り添っているのだが、何の力もないパブロフは気付かない。
近々ようやく独り言を言う夢華に耐性が付いて、夢華を通して会話する位なら宝石達と親しむようになった。

「だって…こんなに時差ぼけつらいとは思わなくて。あ~あ、次元の門なんて使わなきゃよかった!」
次元の門は魔法を使う事が出来る者ならば、誰だって使用できる通行手段だ。
自らの魔法力を注いで遠くまで移動するのだが、それ程魔力を必要とする物でもない。
例え10歳の少年少女でも、それ程苦にはならないのだ。
ただ、通行料に少しかかるのと、本当に遠くは幾つか街を経由しなくてはならないのが難点だろうか。

「そんな事言ったって、次元の門使わなきゃ何日かかると思ってんだ?」
パブロフは計算しようと思って止めた。一ヶ月はかかる。
『これ、いつまで我を転がしておく気か?』
本気で寝ようとしている夢華に、「尊厳」がぶつくさ文句を言う。
「尊厳」は女性の宝石で、声は少し低い大人のものだ。

『はっ!ババァにはぴったりじゃないか?高いところよりかは地に這うのがお似合いだ』
超毒舌にして悪戯好きの「明光」兄、ことメイ君(夢華命名)はなぜか「尊厳」に酷い。
宝石の中ではトップの力を誇る「明光」兄弟は、その力の大きさ故に自分の姿を持っている。
メイ君は深い緑の髪と目をしていて、見た目は10歳そこらの少年だ。

『ふん、クソガキが。自分の本体も見失うような能なしに言われとうないな』
『うっせー!てめぇは俺より弱いだろうが!』
「ちょっとぉ、うるさい。寝れない」
夢華は煩わしそうに手を振った。

「何だ、また喧嘩か?」
パブロフは元々野生の性を強く持つので、時差ぼけは気にならない。

「そーなのよぅ。あーうるさい」
「お前が起きてその王冠を頭に乗っけておけば、こうはならなかったんじゃないか?」
尤もな事を言う。
「ちぇ、パブロフったら一人前の口きいて。あ~あ、昔のパブロフは良かったなぁ。
可愛かったなぁ。『夢華ちゃ~ん』ってトコトコ付いて来たのにさ」
「娘が独り立ちした父親みたいな事言うなよ」

ギリシャは遠い。次元の門を使っても、幾日かかかってしまう。
夢華は時差ぼけでしばらく動けそうにもない。
「あ~あ…何でおればっか苦労…」

「希望」はこっそりと外の様子を窺い、苦笑した。
夢華はまだ名前が変わる前の頃、本当にしっかりした娘だった。
歳だって、まだ遊びたい盛りのはずなのに、ちっとも笑わなかった。
それがどうだろう。今じゃペットにだって甘えている。

『どうした、「希望」よ。何か?』
「尊厳」がこそっと耳打ちしてくる。でも「希望」はただ首を振った。

ただ、この平和が続けば…それでいい。他には望まない。
「希望」は、ゼウスに平和を祈った。
 

はい^^

 投稿者:謎の人  投稿日:2007年10月15日(月)01時09分31秒
返信・引用
  しばらく、放置して、ごめんなさい(;^_^A アセアセ
色々、カキコしてネ^^
文章が立派で、コメントもロクにできません
勉強に支障が無い程度に書いてくださいネ^^
 

お願い

 投稿者:お天道様  投稿日:2007年 9月16日(日)11時54分4秒
返信・引用
  ステージ2の方でゼウスに関するお話(宝石達が多少入る)を書きたいんです。
大体三十年位前の設定で…。
それ書くとこのステージの設定が大分楽になるので、ちょっとこっちを放置してもいいですか?
 

クリン達の旅

 投稿者:お天道様  投稿日:2007年 9月11日(火)20時36分18秒
返信・引用
  「そうですか…分かりました、お気を付けて」
目の前に人はいない。動物も、植物も、生きる者は何もいない。虚空を彷徨う目線の先には
ただ美しい青空が広がるのみ。しかし、そのリスは空に話し掛けているわけではなかった。
それ以前、空が見えているのかも怪しいものだった。

「ねぇ幻影さん。夢華様は何ですって?」
人には絶対の忠実を誓い、その手足となり命をも惜しまないクリンだったが、幻影は彼女の
守るべき対象ではないようで、口調は少し荒かった。
「これからヨーロッパに向かわれるようです」
無愛想を絵に描いたようなこのリスは、今主人と交信していたのだ。

「ヨーロッパ!?きゃ~、行ってみたい!」
まだ若く好奇心旺盛なクリンにとって、ヨーロッパは何とも甘美な響きを持っているようだ。
「行かないよ、クリン。交通費掛かるから」
しかし、彼女の唯一の落胆すべき点は、この商売に情熱を掛ける兄の存在だろう。
「…分かってるもん」
だけどやっぱり、彼女にとって肉親と共に居られるのは何よりの喜びのようだ。

「それともう一つ、有益な情報がございます」
「へぇ?何だい、気になるね」
クリンの兄はもっと砕けた調子で幻影に訪ねる。
「どうやら、宝石の創造主の元に向かわれるとか」
「何ですって!誰が宝石を作ったのか、夢華様は知っていらっしゃるの!だったら、初め
から行けばいいのに」

「それが…簡単にはゆかぬのです」
「何故だい?」
「どうやら…創造主は人ではないらしいのです」
「人じゃない?」
「はい。ギリシャ神、大神ゼウス。木星に例えられる歴とした神です」
 

夢華の旅

 投稿者:お天道様  投稿日:2007年 8月19日(日)11時33分19秒
返信・引用
  「ねぇ、あんた達宝石なんでしょ?」
夢華は呆れたような、期待しているような、どっちにもつかない声できいた。
『そうじゃが?』
『だからなんだよ』
一人は低めの女の声。一人は少し高い男の子の声。

「だったらさぁ、こう…何て言うの?感、みたいなさぁ。それで仲間の位置を辿れないの?」
『ふむ、本来、そうやって仲間を見つけるものだ』
『だけどこうも俺らの力が世の中に溢れてると、上手くいかねぇんだよ』
「…どういう事?」

『化け物は…十年位前に、突然この世に溢れた化け物達。あれは俺らの力でできたものだ』
「え…」
『我達を封じていた箱…あれが開かれた事で、我らの力が外に漏れた。そしてできたのが
化け物』
『この世は俺達の力で満ちあふれてるんだ。だから探ろうにも仲間の気配が分からない』

「じゃあ、貴方達を封じた人は?その人なら何とかなるんじゃ…」
『そやつは人ではない』
「人じゃない?」
『そいつはギリシャ神だよ。でもゼウスは仲間内のもめ事で忙しいんだ』
「ギリシャ…ヨーロッパね」

『うむ。ゼウスの住む神殿の、最高司祭。あやつは裏切り者じゃった』
『ゼウスの神殿は、恐らく内戦中だ。近付くのは危険だぞ?』
「でも私達には貴方達が居る。大丈夫よ」

夢華は傍らのパブロフに言った。
「パブロフ、ヨーロッパに行くわよ!」
 

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